災害時の配慮にかかるリーフレット 表紙 防災担当の皆さまへ 災害時における身体障害者補助犬を使用している視覚障害者・肢体不自由者・聴覚障害者に対する必要な配慮について 災害時の避難所では、補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)同伴の受入れが義務付けられています。 身体障害者補助犬(以下、補助犬という)とは、目や耳、手足に障害のある方をサポートする盲導犬・介助犬・聴導犬のことをいいます。 公的施設等でのその同伴の受入は「身体障害者補助犬法」で義務付けられているとともに、「国民は、身体障害者補助犬を使用する身体障害者に対し、必要な協力をするよう努めなければならない。」とされています。 ・身体障害者補助犬法(以下、補助犬法という。)に基づき、必要な訓練を受けており、使用者は補助犬の衛生・行動管理をしっかりと行っているので、社会のマナーを守り、清潔にしています。 ・補助犬法によって、公的施設や不特定多数の人が利用する施設では補助犬同伴の受入が義務付けられています。 ・補助犬であることが分かるように、犬種・認定番号・認定年月日等を表示しています。 1ページ目 令和6年能登半島地震での避難の実態 ●避難所に避難した盲導犬ユーザー灰谷さん 日頃から地域の方々との関係性を築いていたことがポイント 石川県能登町在住の灰谷さんは、盲導犬ユーザー。日ごろからご近所さんとの関係性を築いていたことに加えて、盲導犬を同伴して仕事などに出かけていた灰谷さんの姿を見て視覚障害者であることを認識してもらっていたのではないかと灰谷さんは話す。 令和6年1月1日、能登半島地震が発生。灰谷さんは自宅は港から70mくらいの自宅の中にいた。津波は来なかったものの、高台にある小学校へと避難することにした。家族が一緒であったものの、車での避難は難しいだろうと徒歩で階段を上っていたときは不安だったが、頑張って小一時間かけて避難所に到着した。 避難所では運営スタッフが灰谷さんの利便性を考え、スタッフの近くにスペースを確保し、盲導犬のためにも畳とタオルの準備や、足の悪い妻のために段ボールベッドも用意して、2人と1匹のスぺー スが作られた。能登半島地震では、すぐに水道が復旧しなかったために、トイレの使用にあたっては、ペットボトルで排泄物を流さなければならなかった。視覚障害者である灰谷さんには水を適切な場所にかけられるかが不安だったが、スタッフが快く引き受けてくれた。こうした視覚障害者に必要な支援を気持ちよくしてくれたことで、「快適な避難生活でした」との感想を持つほどとなった。しかし、水の復旧に時間がかかったことから、盲導犬のシャンプーができなかったことが気になっていた灰谷さんは、12日間避難所生活をしていたが、小松市の盲導犬ユーザー仲間の事務所に避難場所を移すことにした。 地域の方々との日頃からの関係性、ユーザー同士のつながりがあったことなどで「安心できる避難生活」ができたと振り返っていた。 ●灰谷さんの住む能登町の防災対策 子どもから大人まで普段の「防災」「訓練」の取組で意識を醸成 能登町では過去の津波の経験を教訓に、各地区で防災訓練が行われていたものの、特に灰谷さんの住む地区は、中学校校長が防災教育に力を入れてきた地区であった。子どもたちの手により、避難道路への照明設備の設置、海抜の案内表示の設置などを行ったのである。きっかけは、東日本大震災。津波が襲う映像は子供たちにインパクトを与え、率先して東日本への支援なども行ってきた。校長は、「とにかく逃げる (率先して避難する)」「想定にとらわれない(過去大丈夫だったは通用しない)」「最善をつくせ!(声掛けや支援をしろ)」の3つの言葉を日頃の教育に取り入れてきた。こうして子どもたちが積極的に取組むことにより、周りの大人が動かされていく。避難訓練に300人が参加することもあったという。こうした取組が意識を醸成させ、皆が自然と「自分がてきることは何か」と考えるようになった。「実際、能登半島地震でも、自然と役割分担ができていったことで、避難者が不安なく避難生活をすることができたのではないか」と能登町健康福祉課の林さんは話す。 2ページ目 地域の避難訓練への参加の重要性 ●地域の避難訓練に積極的に参加している石田さん 避難訓練に参加することで、自治体や避難所運営者に盲導犬ユーザーを知ってもらう 島根県松江市在住の石田さんは、盲導犬ユーザー。防災訓練に参加したのは、2016年の島根原子力発電所の広域避難訓練への参加申し込みがきっかけ。訓練の2日前に「盲導犬の世話はできないので参加を取りやめてほしい」と運営側から申し入れがあったが、世話はユーザーがすることを説明して参加にこぎつけた。ほかの参加者 から盲導犬が静かにしていることに驚かれたり、行政担当にも盲導犬ユーザーについて理解を得られる機会となった。その後、航空会社や鉄道の避難体験等にも参加し、2021年には島根県の防災訓練に参加。段ボールベッドのあるファミリールームへの避難を体験した。その後も積極的に毎年参加し、行政担当から検討事項が尋ねられた際、視覚障害者の立場から改善点などを伝えることができたのは成果となった。また、障害者自身が普段から避難経路を歩いて確認し、「どう避難させてもらえるか?」と受け身でいれば大きな障壁となることを感じ、自助・共助の視点から、ITの併用を含め、当事者の知恵を集めて障害者が安心して入所できる避難所について、県に提言を行った。 ●補助犬ユーザーの災害時の不安 盲導犬・介助犬・聴導犬ユーザーに聞く 本事業で実施している「身体障害者補助犬の効果的な普及・啓発に関する検討会」委員の山本さん、木村さん、松本さんに伺いました。 要支援者として認識されているが、補助犬ユーザーであることは認識されていない? 災害時要援護者対策として、高齢者、障害者等で災害発生時の避難等に特に援助を要する人の名簿が作成されているため、障害者としての登録はされていると思われるが、補助犬ユーザーであることが認識されていない可能性があり、避難時に補助犬を同伴できるのかが不安。実際に自治体の民生委員と避難することにはなっているが、補助犬については知らせていない。 避難訓練に補助犬ユーザーの参加の機会がない? 災害時を想定した避難や避難所での生活体験など「避難訓練」の実施において、補助犬ユーザーとして参加ができていない状況が見られる。障害者が参加している場合も、自分事として参加していない状況が見られる。障害者への配慮とともに、補助犬ユーザーへの配慮事項などの情報を共有する場がないために、災害が発生した場合に不安。 避難所では周囲の人にペットではないことを理解いただけるか? 補助犬はペットではなく、障害者の支援をしている犬であるが、ペット禁止の避難所である場合、周囲の人に「ペットではない こと」を理解してもらえるのか不安。非日常の状態で理解してもらう余裕があるのかも不安。 裏表紙 あなたのまちに、補助犬ユーザーが住んでいることを想定していますか? 令和3年6月の厚生労働省事務連絡では、「避難所等で生活する障害児者への配慮事項等について」において、避難所等で生活す る障害児者とその家族への支援について示しています。 https://www.mhlw.go.jp/content/001186655.pdf(PDFデータ) 災害時の避難や避難所等におけるこうした障害児者等への配慮事項に加え、補助犬を使用している障害者に対する受入の配慮ポイントとして主なものを示します。 配慮すべき内容でわからないことがあれば、直接補助犬ユーザーにたずねることが大切です。また、補助犬ユーザーにも訓練などに参加してもらい、シミュレーションを行うことができれば、いざという時への備えとなります。 災害時における補助犬ユーザーの受入の配慮ポイント ●避難している方々に補助犬への理解を広める 補助犬は、障害者の生活に必要な支援をしており、補助犬法で公的施設には同伴受入が義務付けられています。ペットではなく、障害者の目となり、耳となり、手足となってサポートしている犬であることを、ともに避難している方々に理解していただけるよう、周知・啓発が必要です。 ●犬へのアレルギーがある方や犬の苦手な方とは距離をとる 補助犬に対する理解は得られても、アレルギーのある方等にとっては受入が難しいでしょう。障害者に対する配慮の周知を図る際に、アレルギーがある人や犬の苦手な方がいることを確認した場合、補助犬ユーザーとは距離をとれるよう配慮することが必要です。 ●情報が得にくい等の障害があるため、居住スペースの配置には配慮が必要 補助犬ユーザーは、視覚障害や聴覚障害により情報が得られない・得にくい人がいます。また、肢体不自由の方は、移動が困難です。居住スペースの配置にあたっては、当事者と話をして配慮について伺う必要があります。できれば入り口近くやスタッフスペースの近くなどに配置することが望まれます。 ●犬犬の世話に対する支援が必要です 補助犬の世話は、基本的に補助犬ユーザーが行いますが、自宅ではない場所は障害者にとってどうしてよいかわからない場合もあります。例えば犬の排泄物の処理はユーザーが行いますが、その方法についての説明が必要です。また、ドックフードも日頃準備をしていますが、避難生活が長引いた場合などは調達の支援を行うことが必要です。 発行:「身体障害者補助犬の効果的な普及・啓発に関する検討会」(令和6年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業) 事務局:社会システム梶Aイラスト:安藤美紀 以上、終わり。